ライヴ・アルバム「BLACK EARTH」が最高過ぎる出来栄えで泣きそうになった

アーク・エネミーは今やスターバンドです。あ、もちろんHR/HM界隈では、ですけども。彼等の新譜がいかに素晴らしいか、という点については別エントリで、想いの一部を書かせていただく予定です。


彼等が実に24年ものキャリアを築いて来たのは本当に驚くべき事実です。まずは「え。そんなに経ってたっけ、マジで?」感パネーわけですが、確かにスタジオアルバムだけで10枚をリリースしているわけですし、その他のEPやライヴ・アルバムを勘定に入れても、その歴史は違和感ありません。

確かに遥々来てるよなあ。

そんな彼等が、20周年の節目に特別なライヴを企画したんですね。そしてそれは、我々日本人のリスナーにとって最高の贈り物となりました。それがこの「ブラック・アース」です。本エントリではこのライヴ・アルバムに対する想いと感想を書かせていただきますよ。

基本情報

製品サイズ : 25 x 2.2 x 18 cm; 160 g
EAN : 4582352389140
メディア形式 : CD+DVD
時間 : 1 時間 45 分
発売日 : 2017/10/4
出演 : BLACK EARTH, BLACK EARTH
販売元 : 日本コロムビア
ASIN : B0753SB2Q1
ディスク枚数 : 3


アーク・エネミーという、メロディック・デス・メタルバンドが結成されて今年で24年。一言に24年といっても、それはそれは色々な事がありました。ファンから見ても色々なんですから、当の本人達の周りでは計り知れない色々が色々だった事でしょう。ちょっとアーク・エネミーの基本知識だけ振り返っておこうかなと思います。

ARCH ENEMYを前進させた日本人

24年前の更に数年前、カーカスというバンドにしばらく在籍していたマイケル・アモットとなる抒情性豊かなギタリストが、カーカス脱退後にハード・ロックのバンドを作ったんですね。

「スピリチュアル・ベガーズ」というバンドです。

僕はカーカス時代のマイケルのプレイが大好きだったので、このスピリチュアル・ベガーズも当然追いかけました。ストーナー・ロックともいわれる、レイドバックした音像とアレンジが素晴らしく、僕は大好きでした。

ほどなくしてマイケルは、アーク・エネミーというデス・メタルバンドを結成します。この時のアルバム・タイトルが「ブラック・アース」だったんです。


このアルバムは、抒情的なメロディ(ギターの)とエクストリーム・ミュージックがもつ攻撃性を、それぞれ先鋭化させながらも同居させるという、デス・メタルの新機軸を強烈に発散していました。多くのバンドはまだその方法論を一般的に扱う以前だったんです。

勿論、いくつかのバンドでそうした試みは始まっていましたし素晴らしいアルバムも存在していましたが、大きな成功を収めるには至っていなかったように思います。

そんな中でリリースされた「ブラック・アース」は、サウンド・プロデュース的な課題を持ちながらも、マイケルの真骨頂が封入された素晴らしいデビュー・アルバムでした。


しかし彼は、このバンドを短期的なプロジェクト・バンドとして考えていたんですね。アルバムを1~2枚程度作って、どこか仲のいいバンドのサポート・アクトでツアーを回ったら、メイン・バンドであるスピリチュアル・ベガーズに専念しようと。

そうして1997年「ブラック・アース」を引っ提げて、ドゥーム・メタル・バンドの雄「カテドラル」の前座として来日します。

そこでミラクル。

前座という短いパフォーマンスでありながら、日本人のオーディエンスが見せた歓迎ぶりがマイケルの心を動かす事になります。

これいけるじゃん。

本当にそういったかは別として、とにかくマイケルはこのバンドを続ける気になった。マイケルの背中を押したのが、当時のライヴで大歓迎した日本人のファン達だった事は、無関係の僕でもなんだか誇らしい気分になります。

初期ベストメンバーの布陣

彼等は3rdアルバム「バーニング・ブリッジズ」のリリースをもって、初期メンバーにおける一旦の完成形に到達します。このアルバムは、とにかく完成度が高く、それまでの2枚のアルバムで構築してきた美醜のコントラストは、更に一段回高いレベルで結実したように思います。

ギター・プレイにおける完成形に到達しつつも、ヨハン・リーヴァのグロウル・スタイルは、微妙に変化していました。


1sr「ブラック・アース」、2nd「ステイグマータ」では、比較的古いというか、古き良きデス・メタル然とした、重低音グロウルを聴かせてくれていたヨハンのスタイルが、後のエモ・コア系にも通じるような、吐き捨て型のガシャガシャしたグロウルに段々と変化していました。

これは概ね好意的に受け入れられていたようですが、僕としては1stアルバムでの彼のパフォーマンスにしびれたクチでしたから、変かを歓迎しつつも、うっすら違和感を感じていたのは間違いありませんでした。

誤解を恐れずにいえば、ややコミカルに感じてしまったんですね。

しかし。

この3rdアルバムを最後に、ヨハンはこのバンドを解雇されてしまいます。

20周年の記念としてその日はやってきた

バンドは色々の変遷を経て、3人目のヴォーカリストであるアリッサを迎えた状態となり、マイケルの実弟であり初期の音像構築に大きく貢献していたギタリストのクリストファーはもういません。

実に20余年の月日が流れる中で彼等は変化を乗り越え、その楽曲はより完成度を増しより挑戦的な内容でアルバムをリリースし続けています。そんな中、バンド結成20周年の節目がやってきます。そこで我らがマイケルは、とんでもない企画にGOサインを出すんですね。

つまり。

3rdアルバム制作時のメンバー構成で、1st~3rdアルバムの曲のみで構成されたライヴを「日本限定」で実現する、というものです。


日本のファンを大事に思っていてくれる、という事をこんなにも判りやすい形で我々に伝える手段が他にあるでしょうか、いやありません。

日本のファンが最初にアーク・エネミーを応援したからこそこのバンドは20年も続ける事が出来た、その記念に日本のファンとの間に特別な時間を創る。マイケルの人間性が本当によく伝わってくる気がします。そしてたった6日足らずのジャパンツアーの模様が、ライヴ盤「ブラック・アース」としてリリースされたわけです。

はい、ここまでが前提ね!

長い前振りでした、すみません。でもね、こういう経緯があってのLIVE盤リリースだったって事をお伝えしたかったんです。マイケルの心意気に、改めて彼を好きになりました。

さてこのアルバムは、CD×2枚、DVD×1枚のスペシャルな構成になっています。セットリストはこのツアーで共通だったみたいで、同じ曲順と内容のLIVEが、それぞれブチヌキで丸ごと収録されています。

この内容がとにかく素晴らしい出来栄えです。素晴らしいと感じた点を幾つか書いてみますよ。

01.原曲通りのチューニングを再現

アーク・エネミーは結成当初から3rdアルバム制作時まで、2本半下げの超ローチューニングで楽曲を制作していました。この事によって禍々しい空気感が醸し出され、ヨハンのデイープ・ボイスにも非常にマッチしていたのですが、ヨハン脱退以降バンドは2音下げのチューニングに変更します。

4thアルバム制作時も2音下げでした。新作として発表されるもののチューニングが変わっている事は何の問題もないのですが、ライヴで演奏される過去の曲が2音下げとなると、アルバムから考えて相対的に半音上げ状態になるんですね。

これはローチューニングの不安定さや新ヴォーカリストのアンジェラとのマッチングを考慮した結果として違和感のない決定でしたが、やはり古いファンにとってはどうしてもちょっと気持ち悪さが残ったのも事実です。

彼等は7thアルバムである「ライズ・オブ・ザ・タイラント」の発表後、1st~3rdまでのヨハン時代の曲を、アンジェラで収録し直すという企画を立ち上げます。全曲とはいかずとも、初期の名曲がスタジオ音源で蘇る事に震えました。

それが「ザ・ルート・オブ・オール・イーヴル」なるアルバムです。

アイデアそのものは最高であるこのアルバムはしかし、やはり2音下げによるチューニングで録音されていたんですね。

嬉しい、でもうっすら違う感……。


それが、ですよ。今回の再結成(?)ツアーでは、ちゃんと2音下げチューニングによるライヴが実現していたんです。

これ、地味に嬉しいんですよ。

最初に感銘を受けた楽曲が当時のキーで演奏されるんですからね。しかも、メンバーが技術的にも人間的にも20年を経て油が乗りまくった状態。

ヨハンだけはアーク・エネミー脱退後に音楽の世界を離れ、昼間の仕事を持っていたそうなのでライヴに参加する事は随分と久しぶりだったハズなので、多少の不安を感じていたのですが、杞憂でした。

ヨハン、超声出てんじゃん。

彼が脱退する直前にリリースされたライヴ・アルバム「バーニング・ジャパン・ライヴ1999」よりも全然イイ感じ!何というか、気負い過ぎないラフな感じが実に自由な雰囲気に繋がっているんです。ヨハンこんなに声出るんや……、と唖然としました。

でも、流石に長年ステージから離れていたからか、ステージ上でのアクションについてはおちゃめなおじさん、って感じでした。コレはコレで可愛かったのでアリでしたけども。

02.演奏が凄まじくハイレベル

ライヴをほぼ丸ごと収録しているので、部分的な修正などはかなり少ないんじゃないかと思います。まあそれなりに手を加えている可能性はありますが、それは商品化する上での必要最低限のマナーだと僕は考えています。

ただそのを事差し引いたとしても、彼等の高い演奏能力に驚かずにはいられません。

もうね、こんなに弾けると大変だなって思っちゃうレベル。ゆーてもなかなかにメンドウ臭い曲(もちろん誉め言葉)が多いんです、彼等の楽曲ってーのは。覚えるのも演奏するのもかなりキツい中、1stアルバムに限っては、アルバム収録曲順を完全再現するという荒業を見せてくれます。。ライヴで完全再現するには、あの曲順はかなり大変なんじゃ……と思っていたら、やはりメンバーみんなが必死になっていました。

彼等程の熟練したプレイヤーでも必死になる程のセット・リストなんです。これはもう聴いてもらえればすぐに判るんですけども。

しかしリズムがモタったりアンサンブルがグチャる事もなく、ハイクオリティなライヴが展開されていました。正に圧巻です。これはHR/HMファンなら見逃してはいかんコンテンツですぞ。

03.ファンの愛が深い

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とにかく、ファンが熱い。このライヴに集っているファンの多くは、自分達の為だけにこのライヴが企画された事を重々承知している愛溢れるヘッド・バンガーズですから、のっけから盛り上がり方が異常です。

もう明日死んでもイイ、くらいの熱狂ぶり。

見たところ若そうなオーディエンスもいて、アーク・エネミーの作品が世代を跨いで受け入れられている事を伺い知れます。まあそらそうです、こんなに日本人好みするメタルを提供し続けてくれているバンドはそうそうありませんからね。


そして、教科書でもあるかのように確実にシンガロング・ポイントで声を張り上げるファンの鏡。

僕も出来るなら現地で「BLACK! EARTH!」と絶叫したかった。

マイケルのギターに合わせてメロディを合唱するシーンは、胸が熱くなって泣きそうになってしまいました。熱いファンのパフォーマンスさえも最高のライヴです。

04.セット・リストにファンへの想いが溢れている

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このツアー、日本だけでしかもたった6回の公演しかないので、たぶん短いライヴ構成になるんだろうなぁと思っていたんですね。しかし、彼等は本当にファンに楽しんでもらう為にとんでもないセット・リストを用意してくれていました。

つまり、ヨハンを起用したライヴでファンが見たい曲聴きたい曲は全てヤってやろう、って事です。いやもう、そう思ってくれたに違いありません。そう確信するほどに、スペシャル過ぎるセット・リストなんです。

なんと全23曲。その内1stアルバムを全曲丸ごとです。

そんな事ってそうそうないんですよ。例えばハード・コアやグラインド・コア系のバンドだったら、曲自体が短かったりストレートな内容のものが多いなどの理由で、アンコール含めて20曲以上をライヴで演奏する事はあったとしても、彼等のような演奏がテクニカルでブルータルな内容の楽曲を20曲以上も演奏するのは、まあ滅多にないと思います。アンコール含めて18曲やってくれたら、かなりイイ方じゃないでしょうか。

しかも、ラス曲まで全くヘタる事なく走り抜けてくれました。

いやーあっぱれ。もはや耐久レースのような内容ですが、現地でこのライヴを目の当たりにしたファンが本当に羨ましいです。

最後に

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思いのタケを好き勝手書かせていただきました。僕がどれほどこのライヴ・アルバムで興奮し、喜び、感動したかは伝わったでしょうか。彼等のファンに対する真摯な姿勢を見て、改めてこのバンドに死ぬまでついて行こう、と心に決めました。

願わくば、最新作でもいいですしこのライヴ・アルバムでもいいので、彼等の音楽を知らない人が興味を持って彼等の作品に触れてくださいますよう。■■