【アルバム解説】メタリカ 10th「ハードワイアード…トゥ・セルフ-ディストラクト」の全曲感想を書いてみた
メタリカの現時点スタジオ盤最新作の全曲感想を書きます。
前作「デス・マグネティック」が2008年発表ですから8年ぶりの発表でした。
「HARDWIRED… TO SELF-DESTRUCT」全曲感想
いやー8年も経ってたっけ?って感じですが。
その前「セイント.アンガー」が2003年。
メタリカの新作発表はそんなペースですね。
1枚発表すると数年ロード生活を送って、ドカンと休んでまた作品作り。
さて今回はどんな出来栄えだったのか。
全曲聴きましたので感想を1曲ずつ書いてみようと思います。
■Disk1:01.HARDWIRED
開幕曲であり、最も早いタイミングで音源が公開された曲でもあります。
まずはこの曲のPVがyoutubeにアップされたんですね。
僕も公開直後に期待と不安にまみれて聴きました。
オープニングから切れ味の良いユニゾンでスピーディに展開する流れは、ここ数作の開幕とは明らかに印象が違います。
余分な贅肉をバッサリ削ぎ落としたかのような構成は、本当にここ10年くらいの間彼等が忘れていた初期衝動的なメタルの味わいがあります。
3分程度の曲なのも超好感触ですよね!
ワンテーマで充分だぜ!といわれているような気分に浸れました。
今回のアルバムは、もしかして、期待……してもイイ……のか?!
02.ATLAS, RISE!
続くセカンド・チューンはまたストレートというかシンプルというか、全くヒネリを棄てたメインリフが飛び出して驚きます。
まずはタイトル、カッコいいよね。
ブリッジにはハーモニーを持ち込んだ挙句、サビでは薄っすら哀愁を感じさせるメロディアスな展開にまたまた驚かされます。
ラーズのリズムは相変わらずシンプルです。
もうタムなんか要らない、とか思っちゃってる?と不安になる程ですが、無駄にオカズをねじ込まれるよりは遥かにイイ感じ。
それでいいよ!ラーズ!!
サビメロは、クサくなり過ぎずイイ塩梅のメソメソ感で嬉しくなってしまいました。
臆面もなくハーモニーを入れてくるのは、今作の方向性を指し示しているのかもしれないな、なんて思いましたね。
ソロ後のツインリードGの頃にはクサさピークに達しますがそれでも臭くなり過ぎるギリギリのラインで持ち堪えた印象で、一安心です。
こういうベタなツインリードをメタリカが2016年に作った事は本当に驚きですが、多分みんなこんなの待ってたんだよなー(わけのわからん変拍子もありません!)。
まエンディングは少々シツコイかなと思いましたがなんとかオッケー範囲内です。
こういう曲もあってもイイよね。
03.NOW THAT WE’RE DEAD
え?こんなオープニングでホントにいいの?と思うくらいに「フツー」な始まりです。
つーか何度か聴いて思い直したんですが、この曲はいわゆる「歌物」なんですね。
ギター・アレンジやリズムの面白さを求める相手ではないなと思います。
じゃあメタリカの曲としてらしくないかというとそうでもなくて、アルバム「ロード」(1996年リリース6枚目のスタジオアルバムでビルボード200の1位を4週連続記録しつつもメタルからの離脱がファンの間で賛否両論を呼んだ)以降に彼等が示した音楽性の一つです。
この分岐点で離れたファンも多かったでしょうが、それとてもう20年以上も以前の事ですから、これはこれでもはやメタリカらしさでしょう。
という理解をした上で、やはり僕は乗り切れなかった側の人類なので、この曲はあまりピンと来ませんでした。
本当に、「ロード」か「リロード」(1997年、「ロード」の翌年に発表された連作のような存在の7枚目のスタジオアルバムでメタルからの離脱が更に加速した作品)あたりに入ってそうな曲なんですよ。
ジェームズの声はドライヴしててイイとは思いましたが、好みの分かれるトコロかもしれませんねえ。
04.MOTH INTO FLAME
この曲はかなりイイと思います。
メロが本アルバム中、最も良く練られているんじゃないでしょうか。
手癖やジャムでなんとなく出来上がったものではなく、ちゃんと作曲してなーと感じる曲(実際の所、前作「デス・マグネティック」は思いついたリフやメロディをつぎはぎして作ったような印象の曲が多く、全体としてのまとまりに欠けるアルバムだったと思います)。
いえ、他の曲がテキトーに作られているなんて思っていませんってば、マジで。
気ぃとか使ってません! 8年待ったんだからね!もう!
兎に角、この曲が本アルバム中で1番好きなナンバーです。
イェッスタデー♪
リフやリズムが特に個性的かといわれればそうでもないのですが、歌メロや構成がイイですね。
ジェームズがのびのびと歌い上げている感じが、聴いていて気持ちイイと思いませんか。
曲としての完成度が高いなと感じます。
リズム・チェンジも素直でいいですねー。
わざと裏拍に見せかけて実は単なる4/4拍子(そう!セイント.アンガーの事です)とかもないですし。
イェッスタデー♪
PVはアルバム発売前に公開されていましたが、この映像もカッコいいですよ。
いいオッサンになりましたねえ、彼等も。
あと、どうっでもいい事ですが、このPVでのドラム・セットはワン・タムですね。
ラーズはもうツイン・ペダルもやめてもいいかもしれません。
8ビートの鬼になってくれたって僕はしっかりついていきますよ。
AC/DCみたいな。
05.DREAM NO MORE
これまでも「重たい曲」は数々発表して来た彼等ですが、この曲の重たさは少々実験的です。
ボーカルをオクターブでダブリングして、まるでオジー・オズボーンの歌唱みたいな効果を狙っていますよね。
この曲も演奏技術そのものやリフのオリジナリティを目指したというよりは、歌物としての完成度を高めた結果のように感じます。
例によって歌メロは悪くないですよね。演奏は地味目ですけども。
ドラマチックな展開は彼等らしい大仰さでなかなか好みです。
サビの劇的なアレンジがカッコいいよね。
なんというか、「ヘヴィ・メタルぽいよなー」って思いませんか。
ライヴではみんなでじっくりヘッド・バンギングするのが気持ち良さそうだな。
06.HALO ON FIRE
ドラマチックなイントロで気分が盛り上がりますね。
で、続くAメロがまるで「日本の昭和ムード歌謡」でまずは度肝を抜かれます。
が安心してください、Bメロからはメタリカですので。
この曲も例に漏れず歌を全面に押し出しており、メタル的アプローチは希薄です。
が、この今日でそんな事はきっと目指していないので、全然アリでしょう。
サビ・メロのドラマ性やジェームズの表現力がイキどころ。こういう演出は流石ですね。
グッと胸に迫るモノがあります。
何気に演奏していますが、なかなかこの味わいは出せないよなって思いました。
まあ正直いいましてGソロに特筆すべきはない感じでした。
ところで、エンディングこんなに長くなくていいんだよなーって思いませんか。
全体を半分くらいのコンパクトな内容でも、ちゃんといい曲になったような気がするんですが、いかがでしょうね。
■Disk2:01.CONFUSION
これはあかん。
いえ、判っていますよ、リフやメロなんて限りある順列組合せの消化でしかないので、似通ったものが出来上がってしまう事はままあります。
ましてや影響を受けた事を公言しているようなバンドの作品のイントロに、ちょこーっと似てしまうのは人として仕方のない事かもしれません。
……。
いや、やっぱあかん!
リズムアレンジ似てて、リフのラインも似てたらやっぱあかん。
まずはダイアモンドヘッドに謝って!
ま、歌に入ると全く別物なんですけどね。
でそれが抜群にカッコ良かったら文句ないんですが、なんとも取り留めのないリフ回しが長々と続くミッド・テンポの曲なんですよね。
メタリカの持っている武器だったら容易く放てる程度の攻撃、なんですよね正直。
この程度の曲をアルバムに入れるくらいなら一曲減らしてくれてもイイのに、なんて思ってしまうのです。
ジェイムズが年々どんどん歌いたがっているのは良く伝わってくるんですが、正直曲そのものが単調に感じられて蛇足感は否めませんでした。
で、長いです。
02.ManUNkind
イントロ長い……。
あすみません、つい。
気を取り直して聴きますよ傑作の可能性だってあるわけなのでね。
……。
ちょ……。
ってこれー……。
ジミヘンに謝って!!
一度ならず二度までもしかも続けざまに?
ちょっとすみません、僕の感覚がオカシイの?
これは、そのー。
あー……、あの曲に似てる、よね?
あかんやつや、これ確信的にあかんやつや。
なんつーか、曲のある部分をまんまパクって(あいっちゃった)るんならそれはそれで、オマージュ混じりの「お遊び」って事でクスリと笑えたりもしたハズですけど、このケースは曲の風合いをごっそりモチーフにしてしまってませんか。
部分はうっすらしか似てないけど、かなり長い間に渡ってうーっすら似続けてないですか。
まだ4/4拍子の間は辛うじて、って感じがありましたが、3/4拍子からはもはやいい逃れさせませんぞ。
めっ。
と色々書きましたが、曲は実はかなりカッコいいんですよね。
重たいシャッフルで、ブラック・サバス的。
アルバム全体において、いいアクセントになっているなと思いました。
曲全体のどっしりとした安定感は強烈な存在感を発散してくれていますから、Liveで飛び回るのが楽しいかもしれません。
なんやかんやゆーて、このアルバムでは2番目に好きな曲だったりします。
愛が深すぎて文句いいたくなってる病ですね。
一応、Jeff Beckのカバーver.を貼り付けておきますよ(コレはコレで最高)。
03.HERE COMES REVENGE
悪くないです。
でも飛びぬけたものもない、と思います。
一番イイのはPVの出来栄えですかねえ。
ほんとPVはセンスあってカッコいいです。
あ、曲の事書かないと。
リフもフィルも再生産感が強いですねえ。
ラスト付近のツー・バスも、ソコでいるかー?って感じですし。
ソロもまあ手癖の雰囲気かなぁこの曲はその程度の感想しか持てませんでした……。
口に合いませんでした。
もう今更、リフの切れが良いとかリズムが重たくてイイとか、そんな感想で喜べない身体になってしまっているんでしょうね、僕。
そうさせたのは誰あろうメタリカなんですが、望むものが勝手に高水準になっているのは自覚しています。
が、お金を出して買ったんだから好きなように書きますからね。
でも大好き!
04.AM I SAVAGE?
イントロの時点では、おアメリカの大地系来た?と期待の腰が持ち上がったんですよ。
「ママ・セッド」的なやつね。
ジェームズが歳を重ねて、ああいう風合いというか味わいを獲得したのはとても喜ばしいと思っているんです。
でも始まったら全然違いました。
んー。
この曲も僕にはアルバム必須の曲ではありませんでした。
歌いたくならないし、頭振りたくならないし、もし仮に未収録だったとしても何の文句もありません。
すまん!
歌ってるジェイムズは気持ちよさそうですね。
05.MUEDER ONE
PVが最っっ高過ぎます。
正直、アルバムを聴いていただけの段階では、退屈してしまっていました。
が、PVを見て俄然聴く気になったんですね。
僕なんてそんな程度の男です、ええ、ええ。
で思い出したんです。
そういえばメタリカの新譜にはレミーへの追悼曲が収録されるらしい、というニュースを。
ソレがこれかっ!
急いで歌詞を読みました。
そしてもう一度歌詞を読みながらこの曲を聴いた僕は、涙をこぼしてしまいました。
こんなんずるいわ。
こんなん泣いてまうわ。
レミーに対して湿っぽい鎮魂歌を送るのではなく、ヘヴィでダーティな曲を書いたその感覚に、レミーへの愛情とリスペクトを感じ、胸に刺さりました。
そしてこのPV。
死ぬ迄ロッカーだったレミーを見事に表現していて涙を更に盛ってくれます。
くっそー。
いい詩書きやがるぜ。
いえ、僕は全然英語とか判っていませんよ、中学生レベル。
でも僕程度の理解でも伝わるようなストレートな詩なんですよね。
詩の随所に、モーターヘッドの曲名から引用した単語が散見されるのも、意図的でしょう。
ニクいなあ。
つーわけで、この曲をもうニュートラルに聴いたり判断出来なくなってしまいました。
死ぬ迄忘れない曲、ってワケではありませんが、メタリカと共にレミーの冥福を祈る事にします(←偉そう)。
Hear your thunder
Still feeding back
I still hear your thunder
The man in black
Born to lose
No excuse
06.SPIT OUT THE BONE
で最後です。やーーっっっっとこさ、速いのキたよ。
もうこれで最後だよ。
これのがしたら頭振るトコないよ!
とーるちゃん!(by酒井)
でまた、これがイイんですよねえ。
敢えて難癖つけるなら、バス・ドラのダブルがずっとモタってるってとこくらいでしょうか。
こういう曲での、ユニゾン感と突撃力は流石ですね。
ド安定。
こういうの、あと2曲くらいはあっても良かったんじゃないかな。
ちゃんとカッコイイのにな。
で2分後半から、イっても3分前半くらいのコンパクトさに収めてくれたらいう事ないです。
ベッタベタのツイン・リードとか、ベッタベタのツー・バスドコドコとか、むっさいいんですよね。
ここ20年の彼等はこのテの恥ずかしい程ストレートな音楽性というものに背を向け続けて来ていた事を思うと、かなり思い切ったというかやーっっっっとこさ吹っ切れた、って事なんでしょうかね。
と褒めておいてナンですが、一言いわせてもらいます。
長いっちゅーねん。
なんで!?
なんで引っ張っちゃうの?
そういう病気なの?死ぬの?。
総論
Embed from Getty Imagesさて、なんやかんや書きました。
あそうそうお気づきだと思いますが、本作の収録曲は全曲のPVがあるんですが、不思議に思いませんでした?
アルバム発売前の時点で3曲程度はPVが公開されていて、変わったプロモーションだなぁーと思っていたら、発売日当日になんと全曲分のPVが公開されたんです。
全曲、ですよ。
そんなお金のかかるトンデモないプロモーションは前代未聞ですよね。
少なくとも僕は聞いた事がありません。
シングル・カットしたワケでもないのにアルバム全曲、ですからね。
このビックリ箱精神は、メタリカのファン・サービスの気持ちの表れだと思うんですよね。
だってアルバム買わなくても全曲映像付きで聴けるワケですから。
勿論僕はデラックス版を買いましたけどね。
曲の感想でも書きましたが、正直食傷気味ではあります。
とにかく長いのでね。
全体のバランスや作品の在り様としては、今でももっと短くて良かったんじゃないかと思っています。
ただ、ブラック・アルバム以降心の底からカッコイイと思えるアルバムに出逢えていなかったので、随分慰謝された感はあります。
前作発表時には、次回のアルバムは期待出来ないなぁと思っていた事を思えば、無茶苦茶イイ誤算でした。
次回作に期待が持てたのですから。ま、10年くらい待つ事になるんでしょうけどもね。
レミーを見習って、もうちょいハイ・ペースで作品作って欲しいものですが、多くは望みますまい。
どんな内容だろうとどんな方向転換をきたしたとしても、死ぬ迄ついていく事を決めた数少ないバンドの一つですから、これからもねちっこいファンとしてお金を貢いで文句をたれようと思いますよ。
あ、どうでもいいですけど、今回のアルバム・アート・ワークは、過去最低だと思いました(直前まではリロードがディフェンディング・チャンピオン)。
最後に
このアルバムをきっかけにして、いくつかのバンドや音源の話も書けそうなので、またねちっこく書いてみようと思います。おつかれっした。■■
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