【全アルバム解説】アーク・エネミーの歴史と名曲・名盤一挙紹介
最新作10thアルバム「ウィル・トゥ・パワー」の破壊力
メタリカでメタルの大陸に踏み込んだ僕にとって、2020年現時点で最高峰は間違いなくアーク・エネミーだと思っています。
しばらくは変わらないでしょう。
このアルバムは彼等にとって10枚目のスタジオ・フルレンス・アルバムで、3代目のヴォーカリストであるアリッサが参加して2枚目の作品にあたります(日本の三代目とはえらく違うもんですがボソッ)。
WILL TO POWER / ARCH ENEMY (2017)

- “Set Flame to the Night" (instrumental) Music:M.Amott,D.Erlandsson Length:1:18
- “The Race“ Lyrics:A.White-Gluz Music:M.Amott,D.Erlandsson Length:3:15
- “Blood in the Water“ Lyrics:A.Amott Music:M.Amott,D.Erlandsson Length:3:55
- “The World Is Yours“★ Lyrics:A.Amott Music:M.Amott,D.Erlandsson Length:4:53
- “The Eagle Flies Alone“★ Lyrics:A.Amott Music:M.Amott Length:5:15
- “Reason To Believe“ Lyrics:M.Amott Music:M.Amott,C.Amott Length:4:47
- “Murder Scene“ Lyrics:A.White-Gluz Music:M.Amott,D.Erlandsson Length:3:50
- “First Day in Hell“ Lyrics:A.White-Gluz Music:M.Amott Length:4:48
- “Saturnine" (instrumental) Music:D.Erlandsson Length:1:09
- “Dreams of Retribution“ Lyrics:M.Amott Music:M.Amott,C.Amott,D.Erlandsson Length:6:40
- “My Shadow and I“ Lyrics:A.White-Gluz Music:M.Amott Length:4:05
- “A Fight I Must Win“★ Lyrics:M.Amott,A.White-Gluz Music:M.Amott,D.Erlandsson Length:6:37
- Personnel
- Alissa White-Gluz – vocals, lyrics handwriting
- Jeff Loomis – lead guitar
- Michael Amott – rhythm guitar, production
- Sharlee D’Angelo – bass
- Daniel Erlandsson – drums, keyboards, programming, production, guitar and bass engineering
- Additional musicians
- Ulf Janson – strings arrangement (12), conducting
- Henrik Janson – strings arrangement (12), conducting
- Stockholm Session Strings – strings performance
- Ulf Forsberg, Christian Bergqvist, Per Öman, Ulrika Jansson, Bo Söderström, Torbjörn Bernhardsson – violin
- Tony Bauer, Riikka Repo – viola
- Johanna Sjunnesson – cello
- Jens Johansson – keyboards (4, 9, 10)
- Christopher Amott – keyboards (6), guitars (6)
「★」は筆者オススメ・トラック
The Race / ARCH ENEMY
このアルバムはバンドに戻ってきたワケではないものの、クリストファーが作曲に参加しているのは特筆すべき点で、やはりこの兄弟が本気で創作活動を行うと、凄まじい化学変化が起きるのだと再確認させられた気がします。
前作に引き続き、ダニエルの作曲活動も更に活発になっています。
また今作では、バンド初のクリーン・ボイスによるボーカルも収録されました。
つまり、活動20年を経てなお、彼等は新たなチャレンジを続けているという事です。
WORLD IS YOURS / ARCH ENEMY(2017)
ワールド・イズ・ユアーズ / アーク・エネミー
最初のシングルとなった「The World Is Yours」は、最初の2日間でYouTube再生回数110万回超えを記録します。
僕はこのアルバムを初めて最初から最後まで聴き終わった時、ついにメタルはここまで来たのか、と思ったんですね。
バンドのリーダーであり、メイン・ソングライターであるマイケル・アモットのギタープレイは、凄まじく個性的だと思います。
判りやすい表現を使うならば、急転直下、でしょうか。
攻撃性と抒情性がこんなにも極端なコントラストを持って、しかし調和し、成立しているバンドはありそうで意外といません。
初期の作品も大好きだし今でも幾度となく聴いていますけど、アルバムの完成度という意味では明らかに現在の彼等がピークだと感じます。
曲展開やメロディ(ギターの)成分の含有率など、マイケルがやろうとしている音世界は明らかにデス・メタルという枠に収まりきるものでは到底ありませんし、挑戦的な実験を恐れず投入するその姿勢に、胸のすく思いです。
本来的に、規制概念の破壊や、社会に対する怒りの発露というものが、エクストリーム・ミュージックの駆動力だと思いますが、アーク・エネミーは怒りの部分が曲によっては哀愁という形に転化されていたりもします。
そのコトについて僕は音世界の拡大として捉えていますけど、デス・メタル原理主義的には異端視したのも理解できます。
彼等の出自があくまでデス・メタルだったのだからそう思われても仕方がないわけですが、1stアルバム「ブラック・アース」の時点でとっくに彼等の音は異端でした。
それこそ、1曲目から急転直下でした。
その曲はまたいずれ書くとして、ともかく彼等の作品は最初ったら目指していたゴールが非常に高い位置にあったんですよね。
ギター・ヒーロー、マイケル・シェンカー(以降シェンカー)直系の流麗なメロウ・センスが、マイケル・アモットの武器の一つです。
しかしマイケルの叙情性はシェンカーのソレに比べて明らかに個性がキツ目、いや簡単にいえばより「クサい」んですよね。
もちろん時代性が違うので単純比較できるものではありませんが、少なくとも「やりたいコト」の振り幅は、マイケル大陸が圧倒的に広大でしょう。
さてそのクサいという表現、なかなか知らない人に説明するのが難しいニュアンスですね。
曲を聴いていただければ判るかと思いますが、時折突如滑り込んでくるギター・オブリガートの哀愁を帯びた美旋律のコト、なんですけども。
方法論としては、演歌に近い、でしょうか。
この展開の後に、こんなメロウなバッキング入れちゃうの?!大丈夫?!とか思っちゃう感じ。
コレがただ無作為に切り貼りした感じなら誰でもできそうなものですが、それらが融合している様を創り出すのは、かなり難しいんじゃないでしょうか。
技術的にもメンタル的にかなり特異だと思います、瞬時にリズムやプレイヤの感情を差し替えるわけですから。
最後に
この曲を聴いてもし悪くない感触を得られたんだったら、是非アルバム単位で聴いてみて欲しいのです。
そして更にアルバム単位でも悪くないと感じたのなら、前作「ウォー・エターナル」も是非に。
この前作でアリッサが始めてアーク・エネミーでレコーディングしたんですよ。
ちょっと荒削りな、それでも独自性の強い個性を感じられると思います。
次のオリジナル・アルバムが待ち遠しいです。■■
2022年1月21日HR/HMエッセイ,全アルバム解説Arch Enemy,ヘヴィ・メタル,メロディック・デス・メタル
Posted by tsuyoshi
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