【全アルバム解説】パンテラが90’に革命を起こした名曲・名盤一挙紹介
- 1. パンテラってどんなバンド?
- 2. バンド草創期、テリー・グレイズ時代
- 3. ついに爆誕、フィリップ・アンセルモ加入後インディー時代
- 4. 1990年代メタルの幕開け、グルーヴ・メタルの時代
- 4.1. 1990
COWBOYS FROM HELL / PANTERA
カウボーイズ・フロム・ヘル - 4.2. 1991
VULGAR DISPLAY OF POWER / PANTERA
ヴァルガー・ディスプレイ・オブ・パワー(邦題:俗悪) / パンテラ - 4.3. 1994
FAR BEYOND DRIVEN / PANTERA
ファー・ビヨンド・ドリヴン(邦題:悩殺) / パンテラ - 4.4. 1996
THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL / PANTERA
ザ・グレート・サウザン・トレンドキル(邦題:鎌首) / パンテラ - 4.5. 2000
REINVENTING THE STEEL / PANTERA
レインヴェンティング・ザ・スティール(邦題:激鉄) / パンテラ
- 4.1. 1990
- 5. MOUTH FOR WAR / PANTERA
マウス・フォー・ウォー / パンテラ - 6. 最後に
乱暴な言い方にはなってしまいますが、1980年代はメタリカによって、1990年代はパンテラによって、2000年代はスリップノットによって、それ迄のメタルとの明らかな違いがもたらされました。
つまり後のメタル界をガラリと変えてしまう程の大改革を起こしてしまったバンド、という事になります。
先述の3バンドはいずれも筆者の大好物ですが、本エントリはこのパンテラというバンドについて、ガッツリご紹介してみたいと思います。
では時系列に沿って彼等の歴史を振り返ってみましょう。
パンテラってどんなバンド?
- 1981年に結成された、アメリカテキサス州出身のヘヴィ・メタル・バンド。結成当初はグラム・メタル的イメージの楽曲を発表していた。1990年代初頭から、後の「グルーヴ・メタル」と呼ばれる音楽性に方向転換し大ブレイク。
- 初期はメンバー・チェンジを繰り返していたが1986年以降は、兄弟であるギターのダイムバッグ・ダレル、ドラムのヴィニー・ポールに加え、ベースのレックス・ブラウン、ヴォーカルのフィリップ・アンセルモで解散まで固定した。
- 世界中で約6,000万枚超のレコードを販売、グラミー賞にも4回ノミネートされている、90年代を代表するメタル・バンド。
- 1995年に、フィルがヘロイン中毒で音楽活動に支障を来たした事をきっかけに、メンバー間の人間関係が悪化しはじめる。その後アルバムを1枚発表するも2001年には活動休止状態に突入。その2年後2003年には関係修復が不可能とし解散が発表される。
- その後それぞれのメンバーは音楽活動を継続していたが、2004年にはダイムバッグ・ダレルが、2018年にはヴィニー・ポールが他界している。
バンド草創期、テリー・グレイズ時代
1990年代以降のメタル・サウンドを強力に牽引した彼等ですが、結成当初からその音楽性を獲得していたワケではありませんでした。
また、ブレイク後もアルバム毎に新しいアイデアにチャレンジし続け、聴きどころ満載のアルバムを連発しています。
よくある事ですが、パンテラの1stアルバムは「カウボーイズ・フロム・ヘル」だと勘違いしている方々が多くいらっしゃるように思います。
所謂メジャー・デビューという意味合いでは間違いでもありませんが、彼等はカウボーイ〜以前に4枚ものフルレンス・アルバムをリリースしており、且つしっかりと評価も得ていました。
この初々しいグループ・ショットはアルバムが発表される以前の1981年撮影で、左からレックス加入前のベーシストであるトミー・ブラッドフォード、サイド・ギタリストのテリー・グレイズ、リード・ギタリストのダレル(弟)、ドラムのヴィニー(兄)が映っています。
この写真には写っていませんが最初期は、ドニー・ハートという人物がリード・ヴォーカルを務めていました。
メジャー時代との最も大きな違いはその音楽性で、ドッケン、クワイエット・ライオット、ストライパー、のような音楽性を目指していたそうです。
1983
METAL MAGIC / PANTERA
メタル・マジック / パンテラ
- “Ride My Rocket“ Writer(s):V.Abbott, D.Abbott / Length:4:55
- “I’ll Be Alright“ Writer(s):V.Abbott, D.Abbott / Length:3:13
- “Tell Me If You Want It“ Writer(s):Glaze / Length:3:44
- “Latest Lover“ Writer(s):V.Abbott, D.Abbott, Glaze / Length:2:54
- “Biggest Part of Me“ Writer(s):Glaze / Length:4:49
- “Metal Magic“★ Writer(s):V.Abbott, D.Abbott / Length:4:17
- “Widowmaker“ Writer(s):V.Abbott, D.Abbott / Length:3:03
- “Nothin’ On (But the Radio)“ Writer(s):Glaze / Length:3:30
- “Sad Lover“★ Writer(s):V.Abbott, D.Abbott / Length:3:27
- “Rock Out!“ Writer(s):Glaze / Length:5:45
- Personnel
- Terry Glaze – vocals
- Darrell Lance Abbott – guitars
- Rex Rocker – bass
- Vincent Paul Abbott – drums
「★」は筆者オススメ・トラック
1stから3rdアルバム迄は元々サイド・ギタリストだったテリー・グレイズがリード・シンガーを務めています。
彼はハイトーンも使いながら「メロディを歌う」タイプのヴォーカル・スタイルで、後のグルーヴ・メタル的風合いはまだ一切感じられませんし、歌唱自体はお世辞にも上手いとは言い難い仕上がりです。
が、この1stは決して下らないアルバムなどではありません。
サウンド・プロデュースのクオリティは仕方ないにしても、プレイそのものはキレがあり、硬質でタイトなリズムや、実にエモーショナルなダレルのギターなど聴きどころは多いです(ちなみにこの1stのプロデュースは、アボット兄弟の父親)。
楽曲の方向性としては伝統的なイギリスのヘヴィ・メタルを下敷きとした「聴きやすいハード・ポップ・ロック」です。
ちなみにアルバム発表時にダレルは16歳、ヴィニーは19歳でした。
アルバム制作時点で既にベーシストはレックスに代わっていますが、当時は「レックス・ロッカー」という名前だったのがなんとも微笑ましいです。
- MELISSA / MARCYFUL FATE
- KILL 'EM ALL / METALLICA
- ANOTHER PERFECT DAY / MOTORHEAD
- SHOW NO MERCY / SLAYER
- SUICIDALTENDENCIES / SUICIDALTENDENCIES
- METAL MAGIC / PANTERA
and more…
1984
PROJECT IN THE JUNGLE / PANTERA
プロジェクト・イン・ザ・ジャングル / パンテラ
All tracks are written by Pantera.
- “All Over Tonight“★ Length:3:36
- “Out for Blood“ Length:3:09
- “Blue Light Turnin’ Red"★ Length:1:38
- “Like Fire“★ Length:4:01
- “In Over My Head“ Length:3:58
- “Projects in the Jungle“★ Length:3:05
- “Heavy Metal Rules!“ Length:4:18
- “Only a Heartbeat Away“ Length:4:01
- “Killers“ Length:3:30
- “Takin’ My Life“ Length:4:31
- Personnel
- Terry Glaze – vocals
- Diamond Darrell – guitars
- Rex Rocker – bass
- Vinnie Paul – drums
「★」は筆者オススメ・トラック
この2ndアルバムからバンドロゴが追加されています(可愛いパンテラちゃんは後にカットされて残念)。
1984年5月上旬/初夏にリリースされ、このアルバム制作に合わせてPANTERA初のPV("All Over Tonight")が作られましたので、貼り付けておきました。
バンドの方向性としては大きく変化していませんが、ダレルのギターは押し引きのコントラストがより強調されていたり、メジャー・デビュー以降も多用する事になるハーモニクスがリフに取り入れられていたりと、メタリックなアプローチが増加傾向にあります。
また、ブレイクダウンがリフに多く組み込まれるようになっていて、将来的に発展させるグルーヴ・メタルの片鱗を伺い知る事も出来ます。
特に3曲目の「ブルー・ライト・ターニン・レッド」は、ダレルのギターだけをフィーチャした「Eruption(van halen)」のようなトラックで、初期ダレルのギター・センスを堪能出来る興味深い曲です(マジ必聴!)。
ヴィニーのドラム・プレイにおいても、メタル寄りのアレンジが明らかに多くなっており、タイトながらもダイナミクスを感じられるプレイを聴かせてくれます。
ツイン・ベース・ドラムの連打も、この頃からアレンジに組み込まれるようになっていますが、メジャー以降に聴かれるアタックを強調したサウンドはまだ確立していません。
この頃既に日本では「BURRN!」誌(1985年3月号)が彼等の情報をゲットしており、記事にしています(流石っ!)。
またこのアルバムは前作以上に評価されセールスも伸びたため、バンドはより多くのツアーを企画し、グッズの制作販売にも投資する事が出来たそうです。
手作り感が微笑ましいグッズの一部を以下に。
- FISTFUL OF METAL / ANTHRAX
- BATHORY / BATHORY
- MORBID TALES / CELTIC FROST
- CITY’S GONNA BURN / LÄÄZ ROCKIT
- VENGENCE OF HELL / LIVING DEATH
- METAL CHAUCH / METAL CHURCH
- RIDE THE LIGHTNING / METALLICA
- GATES TO PURGATORY / RUNNING WILD
- HAUNTING THE CHAPEL / SLAYER
- LIVE UNDEAD / SLAYER
- WAR AND PAIN / VOIVOD
- PROJECTS IN THE JUNGLE / PANTERA
and more…
1985
I AM THE NIGHT / PANTERA
アイ・アム・ザ・ナイト / パンテラ
All tracks are written by Pantera.
- “Hot and Heavy“ Length:4:06
- “I Am the Night“ Length:4:27
- “Onward We Rock!“ Length:3:56
- “D*G*T*T*M (Darrell Goes to the Movies)“ Length:1:43
- “Daughters of the Queen“ Length:4:16
- “Down Below“★ Length:2:49
- “Come-On Eyes“ Length:4:13
- “Right on the Edge“ Length:4:06
- “Valhalla“★ Length:4:05
- “Forever Tonight“ Length:4:10
- Personnel
- Terry Glaze – vocals
- Diamond Darrell – guitars
- Rex Rocker – bass
- Vinnie Paul – drums
「★」は筆者オススメ・トラック
3rdでもバンドはPV("Hot and Heavy")を制作しましたので、貼り付けておきました。
この頃になるとパンテラはかなりメタリックな楽曲を制作するようになっており、前の2枚に比べるとリフやサウンドの作り方がメジャー以降の彼等を連想出来る仕上がりになっています。
全体を通してバンドの方向性がより固まった印象で、ダレルのプレイは更に磨きがかかって絶好調、ギター・ソロの聴きどころが多いアルバムです。
またテリー・グレイズが参加した最後のアルバムで、それが影響したのかは判りませんが、目指せロブ・ハルフォード!と言わんばかりの切り裂くようなハイトーン・ヴォーカルを聴かせてくれるのも大きな変化です(ややパワー不足な感は否めませんが)。
「6.ダウン・ビロウ」は実に伝統的なヘヴィ・メタル・ナンバーで、次のアルバムで早速再集録していますし(ギター・ソロが超ヤバい!)、「9.ヴァルハラ」も、今聴いても全然カッコいいメタル・ナンバーです(ごめんなさい、歌以外は)。
- SPREADING THE DISEASE / ANTHRAX
- FEAR OF TOMORROW / ARTILLERY
- THE RETURN…… / BATHORY
- INFERNAL OVERKILL / DESTRUCTION
- BONDED BY BLOOD / EXODUS
- 戦争(ACCIDENT) / FLATBACKER
- DEADSONG / GASTUNK
- WALLS OF JERICHO / HELLOWEEN
- ENDRESS PAIN / KREATOR
- NO STRANGER TO DANGER / LÄÄZ ROCKIT
- KILLING IS MYU BUSSINES…AND BUSSINES IS GOOD! / MEGADETH
- POWER FROM HELL / ONSLAUGHT
- FEEL THE FIRE / OVERKILL
- HELL AWAITS / SLAYER
- SPEAK ENGRISH OR DIE / S.O.D
- ENERGETIC DISASSEMBLEY / WATCHTOWER
- I AM THE NIGHT / PANTERA
and more…
ついに爆誕、フィリップ・アンセルモ加入後インディー時代
4枚目のアルバムで遂にリード・シンガーとして、フィリップ・アンセルモが加入します。
このラインナップは2003年の解散まで続く事となり、1990年代以降のグルーヴ・メタル的潮流を作るきっかけとなるワケですが、この時点ではまだグラム・メタルの味わいを微かに残すへヴィ・メタルといった趣です。
1988
POWER METAL / PANTERA
パワー・メタル / パンテラ
All tracks are written by Pantera, except where noted.
- “Rock the World“ Length:3:34
- “Power Metal“ Length:3:53
- “We’ll Meet Again“ Length:3:54
- “Over and Out“★ Length:5:06
- “Proud to Be Loud“ Writer(s):Marc Ferrari / Length:4:02
- “Down Below“★ Writer(s):Diamond Darrell, Terry Glaze, Vinnie Paul, Rex Rocker / Length:2:49
- “Death Trap“★ Length:4:07
- “Hard Ride“★ Length:4:16
- “Burnnn!“ Length:3:35
- “PST*88“ Writer(s):Darrell, Paul, Rocker / Length:2:51
- Personnel
- Phil Anselmo – lead vocals (except track 10), background vocals, production (except track 5)
- Diamond Darrell – guitar, lead vocals (track 10), background vocals, remixing, production (except track 5)
- Vinnie Paul – drums, background vocals, engineering, remixing, production (except track 5)
- Rex Rocker – bass, tubular bells, background vocals, production (except track 5)
- Additional musicians
- Marc Ferrari – guitar (tracks 3, 5), background vocals, production (track 5)
- “The Eld’n" – keyboard, engineering, remixing, production (except track 5)
「★」は筆者オススメ・トラック
P. Anselmo
フィルの唄い回しもハイトーン・パートが圧倒的に多くメジャー後のイメージとかなり違っていますが、流石に前任者と比べても各段にパワーがあり、安定したヴォーカリストを遂に獲得したという印象です。
高音シャウトでビブラートなど、今現在のフィルからは考えられない歌唱を聴かせてくれますよ。
前作の収録曲だった「6.」をフィルのヴォーカルで再録していますが、ここで聴かれるハイトーンもパワーがあり聴き応え充分。
ギター・アレンジも幅が広がりサウンドの厚みも各段に増していますから、今聴いても遜色なく楽しめる曲が多いです。
この頃は世間的にとにかく毛を立てる時代だったので、全員頑張っており微笑ましいですね。
この4th「パワー・メタル」がリリースされた直後、先輩バンド「メガデス」はギタリストを必要としており、ダレルにメガデス加入の誘いを申し出ていたというのは有名なエピソードです。
ダレルは彼の兄、ヴィニー・ポールと共にであればメガデスに参加しても良いという条件を提示しますが、メガデスは既にニック・メンザを新ドラマーとして雇っていた為にダレルはその申し出を断ります。(代わりにデイヴ・ムステインはマーティ・フリードマンの加入を決定)。
メガデスの黄金期メンバーが最高なのは変わらないと思いつつ、もしアボット兄弟を含むメガデスで名盤「ラスト・イン・ピース」を制作していたのだとしたら、と妄想せずにはいられません。
- STATE OF EUPHORIA / ANTHRAX
- LEPROSY / DEATH
- FROLIC THROUGH THE PARK / DEATH ANGEL
- SO FAR,SO GOOD…SO WHAT! / MEGADETH
- …AND JUSTICE FOR ALL / METALLICA
- SURVIVE / NUCLEAR ASSAULT
- UNDER THE INFLUENCE / OVERKILL
- SOUTH OF HEAVEN / SLAYER
- THE NEW ORDER / TESTAMENT
- VANISHING VISION / X
- BLACK CLOUDS / OUTRAGE
and more…
Related Posts
人生はワン・ツー・パンチで行進しようぜ!
今日の一曲-040 WALK / PANTERA 続けてパンテラです。 2ndア ...
1990年代におけるメタルの突破口
今日の一曲-039 MOUTH FOR WAR / PANTERA さて、パンテ ...
女性グロウルのパイオニア、アンジェラ・ゴゾウの集大成
今日の一曲-036 YESTERDAY IS DEAD AND GONE / A ...
BABYMETAL好きメタルリスナーの独り言
過去エントリは出来る限り自分最大限客観的に語ろうと思案した結果、ベビーメタルを少 ...
マイケルは一緒に歌うのが気持ちイイ曲を作るの上手い!アリッサと一緒に吠えようぜ
今日の一曲-050 2017THE EAGLE FLIES ALONE / AR ...
Discussion
New Comments
No comments yet. Be the first one!