HR/HM歴30年超のおっさんが一度BABYMETALについて語っておこうと思う
今やすっかり人気者になったベビーメタルですが、みなさん御存知でしょうか。もしかしたらHR/HMリスナーではありつつ、今でも敬遠されている方々もいらっしゃるかもしれませんね。
グループ名くらいなら聞いたことある、3曲くらいなら聴いたことある、とかでしょうかね。
2ndアルバム「メタル・レジスタンス」の発売日
同日、会社でとあるIPメッセージが飛んできます。先輩社員Kさんからのメッセージには、ニューアルバム収録曲「ザ・ワン」 のPVが貼り付けられていました。メッセージの内容はこうです。
BABYMETALの新曲がDREAM THEATERみたいになってるw
へーそんなんだー的な気分になったものですから、取り敢えず軽い気持ちで聴いてみました。ソレがこのPV。
ふーん、なかなかギターかっこいいなあ。
そんな感想を持った事が事の発端です。それまでの僕が、ベビーメタルをどう認識していたかというと、メタルをモチーフにした新しいアイドルの売り方の1つ、くらいの感じだったんですね。
海外で評価されているらしき噂もうっすら知っていつつコレも特にフックしてこなかったので、ふーん、へー、くらいの感想。そんなおっさんが、ついついその他の動画にカーソルを乗せてから、気が付けば1時間ほど次々と動画を見ていました。何度も繰り返し観たのは主にこのPV群です。
えっ。待って待って。こんなんやったっけ、マジで。ちょっとちょっと。あかん、ハマる。むっさイイ。もっと聴きたい!
こうしてメタル歴30年選手の僕はいとも容易くベビーメタルにズッパマリしてしまいました。これは本当に自分の事ながら超意外な出来事でした。沸き起こる何故の嵐。そこで、自分の波立った気持ちを整理したのですが記憶を、書こうと思います。
BABYMETALとは何なのか
当時僕はこの答えを知らないおっさんでしたが、今は知っているおっさんになりました。
個人的な解釈が多分に含まれる事が前提ではありますが、まだベビーメタルを知らない人類に向けてこのグループ、プロジェクトを決めうちしてみたいと思います。
01.元はアイドルユニットの派生
Embed from Getty Images後の「ベビーメタルはメタルか否か」論争の答えは出たも同然です。元々、アイドルグループに所属していた3名の少女が、プロジェクト的存在としてベビーメタルの企画に駆り出されたのが最初のようです。
つまり、プロデューサ(後のKOBAMETAL氏)のサブ企画的に立ち上がった、その瞬間は恐らく期間限定の「企画モノ・ユニット」だったんじゃないでしょうかね(このあたり適当に想像で書いています)。
2010年結成と知ってギョっとしましたが、その瞬間にはパーマネントな企画ではなかったのだろうと想像し納得しました。確かに、企画としては秀逸だと思います。
1990年代に不遇の時代を過ごした、決して交わる事のなかった2ジャンルをピックアップし、2010年にハイブリッドとして市場に投下するのは、エキサイティングだったろうなぁと羨ましい気分にさえなりました。
これも恐らくですが、結成時点ではおおきなロードマップまで描かれてはいなかったんじゃないでしょうかね。メンバーの中元すず香さん、水野由結さん、菊地最愛さんは、当然ながらMETALのMの字も知らないようなアイドル歌手の卵だったことでしょう。
02.フィクサーはKOBAMETAL
Embed from Getty Imagesここ、地味に大事なところだと思うんですが、ベビーメタルの戦略やそもそもの着想は、プロデューサKOBAMETAL氏によるものです。この事実もまた、ベビーメタルはメタルか否かの答えの一部だといえますよね。
つまり、ベビーメタルの少女3人は、ヘヴィ・メタル・ミュージックを生み出すアーティストではないという事です。
これは別に劣っているといいたい意図は全くありません。別物だ、といいたいだけです。HMアーティストとしては、ベビーメタル氏のほうがむしろ近しい存在といあそうです。
03.バックバンドは複数存在するがまともに演奏しているのは1バンドだけ
Embed from Getty Images当時僕が一番驚いたのは、ライヴ映像でまともに演奏している事でした。打ち込みで作ったメタル風アレンジの曲、とはいえなくなったからです。そしてどのプレイヤーも恐ろしい程クオリティの高い演奏を実践しているのです。相当疑ったのですが、間違いなく演奏しているのを知って一気に興味が跳ね上がりました。
素直に調べてみると、それぞれの活動歴はしっかりしたプレイヤーばかりでしたが、ベビーメタルプロジェクトとして作られたバンドとの事です。まあなんというか、メタル・ミュージック選手権日本代表、みたいな感じ?いや、プロフェッショナルじゃないって意味じゃありません。ヨリスグリって事です。
とにかくライヴ映像を見ればよくわかるように、完全にワールドワイドで通用する人々です。正直いって、このクオリティを日本のメタルとして全世界に認知させてしまった事は、その他の若手メタルバンドにとって苦境を招く事になるかも、と思いましたね。
超高いレベルでメタル・パロディを演奏している。こう書くとディスってるみたいですが、完全に好意的な意味でそう思います。
書き忘れましたが、アテブリだけのバンドが存在していました。完全にエアーバンドですが普通はコッチがメインになるのに、そうではないトコロがベビーメタルの面白い点でもありますね。
04. BABY METALはMETALアーティストではなくMETALパフォーマ
Embed from Getty Imagesま、いいたい事はコレです。アイドルを世に売出す上で、どういう商品的装飾をするかという課題に対し、テーマとして「ヘヴィ・メタル」を採用した結果です。3人の少女達は、お仕事メタラーなのは明らかです。
フルレンス・アルバム3枚と、ライヴDVD4枚をそれぞれ少なくとも50回以上視聴しましたが、曲そのものの種はメタル・ミュージックではありません。そこは純然たる「アイドル曲」といえそうです(正直いってこの表現には自信が全くありません。アイドル曲として認識している楽曲の殆どが1990年代以前のものに限られるからです)。
実際メロディラインや歌詞そのものなどに、メタル的要素はあまり存在しません。アレンジを変えたらフツーに聴きやすい曲になるでしょうね。
そこで重要になるのが、バックバンドの演奏とメタル・アレンジ力です。ライヴでバックの演奏をしているメンバーが、アレンジに関わっていたのかどうか調べていませんが、圧倒的にメタルが好きな人間が担当したのは間違いないでしょう。
ワカッテル感がパネーです。
正直、メタルファンであれば、歌が全くなくてもご飯何杯でもイケる人も多いと思います。それくらいメタル純度が高いのです。
ただし。
メタルというカテゴライズでいえば純度が高いのは間違いなくても、メタルの内側も多彩なジャンルが存在しているワケなので、その総てのジャンルにおいてドンズバの大正解かというと、そうではありません。
当たり前の事を書きますが、デス・メタルというジャンル一つとっても、むっさ種類がありましてそれこそバンド単位で味わいが違うワケです。メタル・ミュージックの更にデス・メタルに絞ったとしても好みの差があるという事です。
ということはどういうことか。
ベビーメタルのメタル的商品価値が高かったとて、総てのメタルファンが好むサウンドには成り得ない、という事です。当たり前過ぎる事実ですが、日頃メタルを聴かない人がベビーメタルを目の当たりにした時には、微妙に誤解しているかもなぁ、なんて思ったりします。
これは、メタルに限った話では当然なくて、明るくないので自信はありませんがアイドルというジャンルつーかカテゴリ?においても同様でしょう。アイドル歌手の歌を好んで聴く人が皆、ベビーメタルのメロディを高評価するとは限らないですよね。
そういった認識を再確認した上で、やはり僕はベビーメタルを大いに楽しめます。それは、自分のメタル原風景を呼び起こされるからだと、最近気がつきました。
05.METAL的観点から聴くと没個性的
Embed from Getty Imagesいい方!
すみません。でも言語化が難しいんですよネー。ややこしいのですが、プレイそのものは個性的です。楽曲単位で見てもある方向性がテーマ(or下敷き)になっている事が窺い知れます。しかし、ベビーメタルというブランドで見ると、メタル・ミュージック的な個性が薄いなと感じます。
いい替えると、色々のメタル的要素が混ざり込み過ぎて、個性を構成するには全方位過ぎるとでもいいましょうか。このことは同時に、プレイの難易度が異常に高い事が前提となります。
メタルぽい事をなんでもやっちゃってるんですね。ソレを実現出来るテクニックには本当に恐れ入りますが、結果として「ベビーメタルが提供するメタル・ミュージックはこういうモノだ」という主張はあまり前に出てこない印象です。
そらそうです、ベビーメタルはメタル・アーティストではないのですから、最初からそんな主張をするつもりはサラサラないはずなので。そうした主張がなくとも、メタル・パフォーマンスとしてハイレベルであるなら、必要充分を満たしているわけなんですよね。
純粋メタル原理主義者にとっては、この部分で否定的な気分になっているのかなと想像します。楽曲や方向性を気に入らないだけのアイドルグループに対して、そこまで怒りやヘイトを感じ発信してしまうことってほぼ皆無でしょう。
敢えて言葉にするなら、「ベビーメタルが魂までメタルに捧げたメタル・アーティストでない」ことに腹が立つ、でしょうかね。
大して車に興味のない女の子が、最強のメンテナンスとチームをサポートに最高のマシンを渡されレースに出たトコロ3位入賞しちゃったとしたら。
で、「僕が喚起されたと気づいた」のがメタル原風景です。このゴチャ混ぜ感、ごった煮感、なんか既視感あるナーと思ったら、メタルを聴き始めた頃の自分でした。何でも聴きたい、好みという縛りをまだ持ちたくない、広く見聞をインプットして全方位にメタルを語れるようになりたい、みてーな。その頃の僕は、レッド・ツェッペリンを聴いた直ぐ後でオジー・オズボーンを聴き、続けざまにハロウィン、アクセプト、更にナパーム・デスやオビチュアリー、からのAC/DCとか聴いてしまうような痛いお子様でした。
流石にベビーメタルは戦略的に楽曲が選ばれているように見えますのでそこまで無軌道ではありませんが、異様に広角の音楽的風景であるといえるんじゃないでしょうか。
僕個人の話でいうと、多くのジャンルの音楽を聴きます。そして各ジャンルそれぞれに、細分化された好みが存在しています。そしてそれらの好みの内、比較的若い頃に好きだったモノが、現ベビーメタルの音楽性に近いんですね。
コレは偶然そうなのではなく、KOBAMETAL氏の戦略だと思うんです。メタルの知識や歴史的背景を知らない状態でも楽しめる作風を狙った結果という意味で。僕が若くて脳味噌プリンだった頃、「カッコイイ!これなにこれ!」と思ってワーキャーいっていたのは、きっと分かりやすく主メロがあり、ダイナミクスのある、かつスピード感のある曲だったんだと思います。
06.KOBAMETAL氏は本当にMETALを愛している
Embed from Getty Images最後にいいたい事はコレですね。彼はメタルを愛しているから、アイドルという真逆の存在との融合にチャレンジした、と。メタルの拘りなくして、あのアレンジや楽曲の完成度を維持する理由が全くありませんからね。もっとテキトーでも全然それっぽくなりますので。
マガイモノといわれる事もあるそうですが、何を今更?と感じます。そもそもがフェイクでありメタルを世間に認知させる狡猾な作戦だった、とまではいいませんが、当たらずも遠からずでしょう。少なくとも、愛情がなければなし得なかったと感じるほどのクオリティは体現済みですし、時代の扉をこじ開ける為にの力学には、反作用も同梱されているものですしね。
最後に
長々と書きました。いいたいことはこれで総てではありません。全然いい足りません。しかし、僕がベビーメタルについてどの程度真面目に考えてみたのかは、そこそこ伝えられてるんじゃないかなーと思うので、本エントリは良しとしようと思います。■■
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