【リぺントレス / スレイヤー】トム・アラヤのヘッド・バンギングがなくても殺傷力充分
Repentless / SLAYER(2015)
スレイヤーを今更ながら紹介します。スラッシュ・メタルBIG4なんて言葉も随分と古い単語になってしまった印象ですよね。
スラッシュ・メタルの職人
Embed from Getty Imagesかつて80年代の初頭、過激な音楽の地平を切り開いたアーティスト達がいました。彼らは音楽性を進化させ時代と寄り添いながら或いは抗いながら、今でも現役で作品を創り続けています。
スレイヤーもそんなアーティストなのですが(厳密にはライヴ活動は幕を閉じました)、彼らはとにかく頑固一徹スラッシュ職人とでもいいましょうか、そのスタイルをほぼ変える事なく、奇跡的に高品質な作品を生み出し続けてきました。
スラッシュという過激でかつ過酷な楽曲世界を、30年に渡ってプレイし続ける行為のなんとタフな事でしょう。こんなもの音楽じゃないと罵倒されたデビュー当初から、彼らは既に概ねスレイヤーでしたし、今もそっくりそのままスレイヤーなんですよ。
最初から高い完成度
Embed from Getty ImagesHR/HMの世界に限らずこういう奇跡的な事は創作の世界で度々起こるようです。つまり、あまりに個性が強い創作者は、未熟な段階で既に完成度が高いという意味じゃないでしょうか。時代の流れや商業的成功との距離から、ベストな状態で創作されていなかったにも関わらず、時代やカテゴリ、既成概念を突き破ってプレゼンスを発揮したわけです。
アルバム音源での殺傷能力ももちろん高いのですが、これがライヴになると更に速く、激しく、攻撃的になるんですから、もうなんだかワケが判りません。
唯一変わってしまった事といえば、オリジナル・メンバーであった、ギタリストのジェフ・ハンネマンはもうこの世にいません。あの、明後日の方向にカッ飛んでいくイカれたG・ソロを生演奏で聴く事が出来なくなってしまったんです。あの時はショックだったな。
スラッシュ金太郎飴
Embed from Getty Imagesこの曲は現時点最新作、11thアルバムからのタイトル・トラックです。正直いって、スレイヤーは本当にいつの作品を取り出してもスレイヤー印のサウンドですので何を紹介するのか迷いました。
まだまだ名曲がありますから先ずは、一番新しい彼らを紹介しておこうと思ったんです。PVでは髭だらけになったトム・アラヤが、カッコいいおじいちゃんになっててしびれますね。ちなみに彼は、長年過酷なヘッド・バンギングを続けていたために頸椎をヤってしまっていて、今は1mmも頭を振れないそうです。
スレイヤーは、死や精神異常といった、とても過激でショッキングなテーマを扱う事が多いバンドです。ナチスを扱った歌詞が問題となってアルバムが発売禁止になりかけたり、アルバム・ジャケットがキリスト教を侮辱しているとして差し替えられたりもしてきました。
彼らは様々な極限状態の人間について表現しているわかなんですけども、その状態を決して礼賛しているわけじゃありません。むしろそうした人間の醜くどす黒い部分に光を当て、そこから目を逸らすなと訴えているんじゃないでしょうか。やり方は少々キツ目ではありますけども。
最後に
ところで僕はスレイヤーのライヴをギリギリ最後の来日である「ダウンロード・フェスティバル・ジャパン2019」で観る事が出来ました。ギリセーフ。
アルバムを発表しさえすれば概ね日本公演を行ってくれている彼らなので長年油断していたんですが、でもそうした油断から、僕は遂にジェフのギターを聴く事が叶わなくなってしまったんです。みなさん、愛するミュージシャンのライヴは、行ける時に行くべきですよ。■■
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